保険診療 と 美容医療 の「狭間」

監修医師

モレロ オースティン誠

MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠

略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院

所属学会
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAPS)関連会員
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
The Rhinoplasty Society 海外会員
アメリカ美容外科学会(AACS)海外会員
日本美容皮膚科学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員

他院修正(ハム目)

2025年10月、他院の美容形成外科にて眼瞼下垂に対する切開術、いわゆる挙筋前転術を受けられた患者様がいらっしゃいました。

術後、目の開き自体は改善していたものの、患者様はまぶたの厚みに悩まされていました。いわゆる「ハム目」と呼ばれる状態です。そのほかにも、二重ラインの上に残る厚み、眼窩脂肪による重たさ、そして目を閉じた時に二重のラインが強く食い込んで見えることを気にされていました。

他院で眼瞼下垂術後のハム目

ハム目をどうする?

手術を受けたクリニックでは、まぶたの厚みを修正するのは難しいとのことで、経過観察となっていたそうです。その後、2026年5月に当院へご相談に来られました。患者様は、術後の見た目について相談しても「保険適応で行った手術なので」と説明され、それ以上の修正は美容診療、つまり追加料金が必要になると言われ、どうすればよいのかわからない状態でした。

そのクリニックは、美容診療を中心に行っている印象ではありましたが、保険適応で手術を行うと、どうしてもこのような「会計の狭間」が生じることがあります。

もちろん、眼瞼下垂という疾患に対する治療として、挙筋前転術を行うこと自体は保険診療の範囲です。そして、二重の形や整容面の細かな調整までを保険診療で行うのは、確かに本来の目的とは異なります。

一方で、眼瞼下垂の治療後に、二重の形、まぶたの厚み、食い込みなどの整容面で悩まれる方がいるのも事実です。私の経験上、そのようなご相談は決して少なくありません。

挙筋前転術は、決して簡単な手術ではありません。複数回の手術を要することはあります。

目の開きだけを調整するのであれば、比較的シンプルに考えられる部分もあります。しかし、目の開き具合と二重の形を同時に美しく整えることは、非常に繊細で難しい手術です。

美容外科は何かと批判されやすい医療ではありますが、保険診療で治療された後の整容的な悩みを、美容外科の技術でカバーできるケースもあります

特に眼瞼下垂術後のハム目修正は、非常に頻度が高く、これまで何度も行ってまいりました。

修正

今回、当院では、重瞼線の解除、眼輪筋の切除によるハム目の修正、眼窩脂肪の適正な減量、そして食い込みが強くならないように配慮した重瞼線の再作成を行いました。

重瞼線を再作成する際には、単に皮膚を深部に強く固定するのではなく、切除した眼輪筋の上下を部分的に再建し、その間にできる組織の隙間に、睫毛側の皮膚のみが自然に癒着するよう縫合しています。

また、眉毛側の皮膚は、二重ラインに強く食い込ませるのではなく、上から被せるように縫合しています。

このように処理することで、目を閉じた時の強い食い込みをできるだけ避けながら、自然な二重のラインを再形成することを目指しています。

術後1週間の時点では、まだ腫れが残る時期ではありますが、まぶたの厚みや食い込みは改善傾向にありました。

重瞼形成に際しては、前回手術による瘢痕性癒着を解除したうえで、睫毛側の眼輪筋切除後の上下断端を部分的に再近接させ、睫毛側皮膚のみを限定的に深部組織へ誘導するよう縫合しました。眉毛側皮膚は重瞼線へ引き込まず、上方から被覆させることで、閉瞼時の陥凹変形を抑えながら、開瞼時の自然な重瞼形成を目指しています。
重瞼形成に際しては、前回手術による瘢痕性癒着を解除したうえで、睫毛側の眼輪筋切除後の上下断端を部分的に再近接させ、睫毛側皮膚のみを限定的に深部組織へ誘導するよう縫合しました。眉毛側皮膚は重瞼線へ引き込まず、上方から被覆させることで、閉瞼時の陥凹変形を抑えながら、開瞼時の自然な重瞼形成を目指しています。

患者様も大変喜ばれており、

「もう伊達メガネを卒業できそうです」

とお話ししてくださいました。

保険診療と美容医療の狭間

今回の症例で考えさせられるのは、保険診療と美容医療の境界についてです。

眼瞼下垂手術は、目の開きを改善するための機能的な治療です。そのため、保険診療で行う場合、主な目的は視野や開瞼機能の改善になります。

一方で、まぶたの手術は見た目にも大きく関わります。目の開きが改善しても、二重の形、まぶたの厚み、食い込みなどに悩まれる方は少なくありません。

美容医療の結果(修正)を保険診療でカバーするケースもありますが、実際にはその逆、つまり保険診療後に残った整容的な悩みを美容医療で修正するケースも昔から多くあります。

たとえば、入院や大きな治療の後にやつれて見える顔貌に対して、ヒアルロン酸などでボリュームを補うこと。顎変形症手術や上顎骨切り後に、顔全体のバランスとして鼻形成を行うこと。皮膚移植や皮弁再建後に、移植部位から生える毛に対して医療脱毛を行うこと。乳房再建後に、乳輪乳頭をより自然に見せるために医療アートメイクを行うこと。

このように、保険診療によって病気や機能の問題が改善されたあと、その先に残る見た目の違和感や日常生活上の悩みを、美容医療が補完するケースは少なくありません(決して保険診療が失敗というわけではなく、あくまでもその適切な治療のために残ってしまった整容的なお悩みを改善するということ)。

大切なのは、どちらが正しいということではなく、それぞれの医療の役割を理解することだと思います。

保険診療で機能を改善し、美容医療で見た目の悩みに向き合う。

今回のような症例は、その両方が患者様の生活の質に関わっていることを、改めて感じさせられるケースでした。

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