監修医師

モレロ オースティン誠

MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠

略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院

所属学会
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAPS)関連会員
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
The Rhinoplasty Society 海外会員
アメリカ美容外科学会(AACS)海外会員
日本美容皮膚科学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員

先日のコラムでは、「MSA美容外科でボルニューマを受ける意味」についてご紹介しました。

ボルニューマは、皮膚や皮下組織に高周波エネルギーを加えることで、痛みやダウンタイムを抑えながら引き締めを目指す治療です。特に、まだ大きな手術を必要としない30代、40代の方や、輪郭の軽度なもたつきが気になり始めた方にとって、有力な選択肢の一つです。

しかし、たるみ治療を深く考えていくと、「皮膚を引き締める」「組織を上へ持ち上げる」という考え方だけでは十分ではありません。顔の老化は、平面的に起こるものではないからです

顔は立体構造であり、加齢に伴って変化するのは、皮膚だけではありません。骨格、脂肪、靱帯、SMAS、表情筋、皮下組織、皮膚といった複数の層が、それぞれ異なる変化を起こします。

このような顔の変化を「上下方向のたるみ」だけでなく、前後方向、左右方向、奥行きまで含めた三次元の変化として診察することを常に重要と考えております。

顔の老化は「下がること」だけではありません

一般的に、顔の老化は「重力によって組織が下がること」と説明されます。もちろん、頬の脂肪やSMAS、皮膚が下方へ移動することは、たるみの重要な原因です。しかし、実際の顔では、それ以外にもさまざまな変化が同時に起こります。

上か下かだけではありません

例えば、

  • 頬やこめかみのボリュームが減少する
  • 眼窩周囲や上顎骨などの骨格が変化する
  • 脂肪が減る部分と、下方に集まる部分が生じる
  • 首と顎の境界がぼやける

といった変化です。

ColemanとGroverは、顔の老化を皮膚の質感変化だけではなく、脂肪の再分布、骨吸収、組織の弾力低下などが組み合わさった現象と説明しています。そして、若々しい顔貌を回復するためには、正面から見た二次元的な輪郭だけではなく、若い時期に存在していた三次元的な曲面や立体感を再構築することが重要であると述べています。

これが、いわゆるvolumetric agingという考え方につながります。

私はたるみを感じている患者様に必ず質問しております。「⚪︎⚪︎さんは、歯は全部ありますか?」と。
患者様は全員「…は(歯)!?」となりますが、私は真剣に質問をしているのです。歯も下顔面の立派なボリューム要素となります。だから必ず質問をするのです。他にも矯正歴なども、たるみの見え方が必ず変わってきます。

Volumetric agingとは何か

Volumetric agingとは、単純に「年齢とともに顔の脂肪が減る」という意味ではありません。

顔の場所によって、ボリュームが減少したり、移動したり、集まったりすることで、顔全体の立体的なバランスが変化していく現象です。

若い顔には、頬やこめかみ、眼周囲、顎周囲に滑らかな曲線と自然な凸面があります。しかし、加齢に伴ってボリュームが失われると、頬の丸みが減少し、眼の下やほうれい線、口元、顎周囲に溝や影が生じやすくなります。

一方で、下顔面には移動した脂肪や皮膚が集まり、ジョールやマリオネットライン、フェイスラインのもたつきとして現れます。

つまり、顔の老化では、ボリュームが減る場所ボリュームが集まる場所が同時に存在しています。

そのため、「老化したからヒアルロン酸を足す」「たるんだから全部を引き上げる」という一方向の治療では、顔全体のバランスを崩すことがあります。

シワやくぼみだけを見て、ただただヒアルロン酸を入れていると、ムクムクと不自然なFiller顔になってしまうのはこのためなのです。(ヒアルロン酸は自然に使うことが重要)

ヒアルロン酸は、単なる「足し算」ではありません

たるみ治療におけるヒアルロン酸は、しわや溝を直接埋めるためだけの治療ではありません。

加齢によって失われた骨格的な支持や、軟部組織のボリュームを適切に補うことで、顔の立体的なバランスを整える治療でもあります。

例えば、ほうれい線が気になるからといって、ほうれい線だけにヒアルロン酸を注入すればよいとは限りません。

中顔面の支持が低下している場合には、頬や上顎周囲の立体感を整えることで、ほうれい線の見え方が自然に改善することがあります。また、顎先やオトガイ周囲の支持が弱い方では、顎の形態を整えることで、フェイスラインや口元の印象が改善することもあります。

一方で、すでに組織の下垂が強い方に、ヒアルロン酸だけでリフト効果を出そうとすると、必要以上の注入量になりやすくなります。

その結果、

  • 顔が大きく見える
  • 中顔面が重たく見える
  • 本来の輪郭が失われる
  • 表情が不自然に見える

といった問題につながる可能性があります。不自然なフィラー顔は、誰もが避けたい状態です

不自然なフィラー顔

引き締める、減らす、補う、戻す

診察では、大きく分けて次の4つを考えます。

1.引き締める

皮膚や皮下組織の軽度なゆるみに対しては、ボルニューマHIFUなどの機器治療を検討します。ボルニューマは、皮膚を単純に上へ移動させる治療というより、皮膚から皮下組織の質感や密度を整え、輪郭を引き締める治療です。そのため、顔の土台が大きく崩れていない方や、早期のたるみに適しています。他にも、皮膚の再表面の弾力を作るためのスキンケアピーリング治療なども重要です。肌質改善・肌のハリupのためのnano fat 脂肪注入も一つの補助治療として有効です。

2.減らす

顎下やジョールなどに脂肪が多い場合には、脂肪吸引脂肪除去を検討します。ただし、すべての脂肪を減らせばよいわけではありません。頬の脂肪が少ない方や、骨格的な支持が弱い方に強い脂肪減少治療を行うと、頬がこけたり、皮膚の余りが強調されたりすることがあります。

3.補う

こめかみ、頬、眼窩周囲、顎先などにボリューム不足がある場合には、ヒアルロン酸脂肪注入などで必要な支持を補います。ただし、溝を直接埋めるのではなく、どの部分の支持低下によってその影が生じているのかを考える必要があります。

4.本来の位置へ戻す

皮膚やSMAS、頬の脂肪、広頸筋などの下垂が強い場合には、機器治療や注入治療だけでは十分な改善が難しくなります。この場合には、糸リフトミニリフトディーププレーンフェイスリフトなどによって、下がった組織を本来に近い位置へ再配置することを検討します。

このように、たるみ治療は一つの手段ではなく、引き締め、減量、補充、再配置を組み合わせる治療です。

フェイスリフトは、ただ「上へ引っ張る手術」ではありません

顔や首のたるみは、単純に下へ下がるだけではありません。

皮膚、SMAS、首の筋肉では、それぞれ下がり方や動き方が異なります。また、左右でも組織の状態は同じとは限りません。そのため、すべての組織を同じ方向、同じ強さで引き上げても、自然な仕上がりにはなりません。大切なのは、深い部分の固定を丁寧に解除し、皮膚やSMAS、首の組織を、それぞれが無理なく動く方向へ戻すことです。深部組織が十分に動かない状態で皮膚だけを強く引っ張ると、表情が不自然になったり、耳の周囲や傷に負担がかかったりすることがあります。

フェイスリフトは「皮膚を強く引き伸ばす手術」ではなく、下がった深部組織(顔の土台)を適切な位置へ戻し、皮膚にかかる力を減らす手術として考えています。

若返りには、奥行きも重要です。どういう意味か?

上方向への引き上げだけでなく、前後方向の立体感も重要です。特に首では、顎の下から首にかけての境界や、顎の角の後ろにある奥行きが失われると、フェイスラインがぼやけて見えます。

Ben Talei医師らが報告したmastoid crevasse techniqueは、首の組織を単に上へ引き上げるのではなく、耳の後ろの深い位置へ固定する方法です。

これにより、

  • 顎の角が立体的に見える
  • 顎下と首の境界がはっきりする
  • フェイスラインが明瞭になる
  • 横から見た首に自然な奥行きが生まれる

といった変化を目指します。

つまり、顔や首の若返りは、上下方向だけでなく、前後方向や奥行きまで含めて考える必要があります。

正面から見た引き上がりだけではなく、斜めや横から見た輪郭、顎下から首へのつながり、顔全体の立体感まで確認しながら治療が重要なのです。

下の画像からもわかるように、フェイスライン周りに集中していた皮膚や脂肪のボリュームを適切な位置に戻すことで、若々しさが出ております。特に2枚目の画像では、afterの方がエラが大きくなっているのがわかります。これが重要なのです。適切なボリューム

ボルニューマからフェイスリフトまで、考え方は共通

ボルニューマとディーププレーンフェイスリフトは、治療の強さも、対象となる組織も異なります。しかし、MSA美容外科では、その根底にある考え方は共通しています。それは、一つの治療をすべての患者様に当てはめるのではなく、その方の顔を立体的に診察することです。

軽度の皮膚・皮下組織のゆるみであれば、ボルニューマ。

骨格的な支持やボリュームが不足していれば、ヒアルロン酸や脂肪注入。

脂肪が多い部分には、脂肪吸引や脂肪除去。

組織の下垂が強ければ、糸リフト、ミニリフト、ディーププレーンフェイスリフト。

さらに首や顎角の奥行きまで失われている場合には、上下方向だけでなく、前後方向、深部方向を含めた再配置を検討します。

治療方法は異なっても、目指しているのは同じです。

皮膚、脂肪、骨格、SMAS、首を三次元で捉え、その方本来の立体感を自然に整えること。

これが、MSA美容外科が考える「本物のたるみ治療」です。

参考文献

  1. Coleman SR, Grover R. The anatomy of the aging face: volume loss and changes in 3-dimensional topography. Aesthetic Surgery Journal. 2006;26(1S).
  2. Talei B, Shauly O, Marxen T, Menon A, Gould DJ. The mastoid crevasse and 3-dimensional considerations in deep plane neck lifting. Aesthetic Surgery Journal. 2024;44(2).
  3. Talei B, Gould DJ, Ziai H, et al. Vectorial analysis of deep plane face and neck lift. Aesthetic Surgery Journal. 2024;44(10):1015-1027.
  4. Donofrio LM. Fat distribution: a morphologic study of the aging face. Dermatologic Surgery. 2000;26(12):1107-1112.
  5. Rohrich RJ, Pessa JE. The fat compartments of the face: anatomy and clinical implications for cosmetic surgery. Plastic and Reconstructive Surgery. 2007;119(7):2219-2227.

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