「今のきれい」だけで決めない豊胸手術

監修医師

モレロ オースティン誠

MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠

略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院

所属学会
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAPS)関連会員
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
The Rhinoplasty Society 海外会員
アメリカ美容外科学会(AACS)海外会員
日本美容皮膚科学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員

痩身、RIB X CAR、そして豊胸。10年後・20年後まで考える治療設計。

豊胸のカウンセリングでは、患者様からさまざまなご質問をいただきます。

「何ccを選べば、理想のお胸に近づけますか?」
「シリコンバッグだけでよいのか、脂肪注入も組み合わせた方が自然ですか?」
「インプラントは、乳腺下、筋膜下、Dual planeのどこに入れるのがよいのでしょうか?」

いずれも大切なご質問です。

しかし、豊胸手術を考えるうえで本当に重要なのは、技術や手術直後の大きさや形だけではありません。

今後さらに体重を絞る予定があるのか。反対に、年齢とともに体重が増える可能性があるのか。ウエストや胸郭に関わる別の手術を予定しているのか。そして、10年後、20年後にインプラントの交換や修正が必要になった場合、どのような選択肢を残しておけるのか。

今回は、先日ありました実際の豊胸相談をもとに、長期的な視点から豊胸手術について考えてみます。

※個人が特定されないよう、相談内容の一部を調整しています。

今回のご希望は「大きな胸」ではなく、体格に合った自然な胸

今回の患者様は、極端に大きなお胸をご希望されているわけではありませんでした。また、元々のお胸も嫌いな形と大きさを備えていたため、とりあえず大きくすればいいというものでもありません。

体格に対して自然でありながら、現在よりも適度な丸みとボリュームのあるお胸をご希望されていました。

現在の胸郭の幅、乳房の横幅、乳腺や皮下脂肪の厚み、皮膚の伸び、今後さらに体重を絞る予定があることなどを総合的に考えると、候補となったのは 最大で Motiva Ergonomix 2 Mini 235cc です。

今回の患者様では、「大きくすること」よりも、「体格の幅に合った自然な形を作ること」が重要だと考えました。

ただし、今回は豊胸だけを単独で考えることができない

今回の患者様は、今後の痩身に加えて、RIB X CARと呼ばれる肋骨リモデリングも予定されていました。

RIB X CARは、下位肋骨に骨折線や骨切りを加え、術後にコルセットなどで内側へ誘導することにより、ウエストや胸郭下部の輪郭を変化させることを目的とした比較的新しい美容外科手術です。

この手術は、豊胸とは別の部位の手術に見えるかもしれません。しかし、お胸の見え方は乳房だけで決まるものではありません。胸郭の横幅、肋骨の張り出し、ウエストとの境界などによって、同じインプラントでも全身が描くカーブによっては変わって見えてきます

そのため、今後胸郭の形そのものが変化する予定がある患者様では、現在の胸郭だけを基準に豊胸の最終設計を決めることには慎重であるべきです。

今回のように、今後さらに体重を絞り、RIB X CARも受ける予定がある場合、豊胸の最終判断は、それらの変化がある程度落ち着いてから行うのが合理的だと考えます。目安としては、痩身とRIB X CARの術後3〜6か月以降

特に、現在のお胸の幅に合わせてインプラントを選んだ後、RIB X CARによって胸郭下部の印象やウエストとの比率が変化すると、同じお胸でも相対的に大きく見えたり、外側へ張り出して見えたりする可能性があります。

反対に、痩身によって乳腺や皮下脂肪が減少すると、インプラントの輪郭が目立ちやすくなる可能性もあります。

したがって、今回は現在の体型を前提にすべてを完成させるのではなく、まず痩身と胸郭形成を終え、その後の体型を見て豊胸を設計するという順番が、より予測しやすく、無理の少ない方法だと考えます。

痩せると、お胸の組織も痩せる

体重が減ると、腹部や脚だけではなく、お胸にある脂肪や乳腺のボリュームも少なくなることがあります。

シリコンバッグそのものの大きさは変わりませんが、インプラントを覆っている乳腺や皮下脂肪が薄くなることで、上胸部のボリュームが減ったり、インプラントの上縁や外側の輪郭が見えやすくなったりする可能性があります。

別の医師では Motiva Ergonomix 2 Mini 260cc を提案されておりましたが、これはこれで正解です。確かに幅てきには11.5cmで行けはします。しかし、今後痩せることを考えると、シリコンを覆うsoft tissueが少なくなり、シリコンの輪郭がかなり浮き彫りになるのではないかと考え、幅を11.0cmにしたMotiva Ergonomix 2 Mini 235cc を当院では提案いたしました。

痩せることを見越して最初から大きなインプラントを選べばよいわけではなく、逆のことをしているのです。

もちろん、体重を絞った後、乳房上部や内側の組織が薄くなった場合には、インプラントだけでは十分になじまないことがあります。その際には、最初から大きなインプラントを入れるのではなく、まず体格に合ったサイズのインプラントで乳房の土台を作り、その後、必要な部分だけ脂肪注入で補うという方法があります。最近では、「後からハイブリッド」などと呼ばれております。インプラントの上縁をなじませる、内側のボリュームを補う、左右差を調整するなど、部分的な仕上げとして使うこともできます。

脂肪注入は自然だが、将来の体重変化の影響も受ける

お胸への脂肪注入では、移植された脂肪の一部は吸収されますが、定着した脂肪は自分自身の脂肪組織として残ります。そのため、定着後も体重の増減による影響を受けます。

たとえば、体重42kgの時に脂肪注入を行い、その時点ではちょうどよい大きさに仕上がったとしても、その後、年齢とともに体重が55kg前後まで増えれば、定着した脂肪も大きくなり、お胸が当初のお好み以上に大きくなる可能性があります。

反対に、脂肪注入後にさらに痩せた場合には、注入脂肪のボリュームも減少する可能性があります。どの程度変化するかを事前に正確に予測することはできません。

特に「あまり大きなお胸は好みではない」という患者様では、将来的に脂肪が増える可能性も含めて、注入量を慎重に考える必要があります。

シリコンを入れるレイヤーにも、将来への影響がある

シリコンバッグを挿入する層には、乳腺下、筋膜下、大胸筋下、Dual planeなどがあります。

どの層が常に最も優れているということではありません。患者様の皮下脂肪や乳腺の厚み、胸郭の形、インプラントの大きさ、運動習慣、希望する乳房の形などに応じて選択します。

Dual planeは、インプラント上部を大胸筋で覆いながら、下部では筋肉と乳腺の関係を調整する方法です。

組織の薄い患者様で上部の輪郭を覆いやすいことや、大胸筋下系のポケットには乳腺下法と比較して被膜拘縮を抑えられる可能性があることなどが利点として挙げられてきました。

しかし、Dual planeにも欠点はあります。大胸筋を動かした際にインプラントが動くanimation deformity、乳房の形の変化、筋肉の違和感、筋肉や乳腺周囲の癒着などが問題になることがあります。つまり、Dual planeが常に乳腺下法より優れているわけではなく、その患者様に大胸筋による被覆が本当に必要かを考える必要があります。

もしDual planeで被膜拘縮が起きたら、次はどの層を使うのか?

被膜拘縮を減らすためにDual planeを選択したとしても、被膜拘縮が絶対に起こらないわけではありません。

もし拘縮が起きれば、被膜切開や被膜切除、インプラント交換、ポケット変更などを検討します。修正手術ができなくなるわけではありません。しかし、ここで問題になるのが、次にどのレイヤーを使うのかという点です。

初回手術で乳腺と大胸筋の間、大胸筋の下など、複数の組織層を広く剥離している場合、将来の再手術では瘢痕や癒着の影響を受ける範囲も広くなります。

そのため、

  • 十分な厚みのある組織が残っているか
  • 以前の被膜をどこまで処理するか
  • 同じ層を再利用するのか
  • 乳腺下や筋膜下へ変更できるのか
  • 脂肪注入などによる被覆の追加が必要か

といった問題が生じます。

複雑な方法を最初から選ぶことが、必ずしも将来にとって最善とは限りません。初回手術で不要な層を温存しておくことが、10年後、20年後に修正手術が必要になった際の選択肢になる場合もあります。

「できることを全部やる」のではなく、「今必要なことだけを行う」

美容外科では、複数の治療を組み合わせるほど、より高度で、より完成度の高い手術に見えることがあります。しかし、治療を重ねるほど、手術侵襲、瘢痕、癒着、合併症、将来の修正手術の複雑さも増えます。重要なのは、術式の数ではなく、現在の患者様に何が必要で、何をまだ行わなくてよいのかを判断することです。

今回の患者様では、今後痩身を行い、さらにRIB X CARによって胸郭の形も変化する予定があります。そのため、現在の体型に合わせて豊胸を完成させるよりも、まず痩身と胸郭形成を終え、術後3〜6か月以上経過して体重と胸郭の形が安定してから、改めてお胸を評価する方が妥当だと考えます。

その時点で、

  • 胸郭に対して何cm幅のインプラントが合うのか
  • Mini 235ccが適切なのか
  • 乳腺下で十分に被覆できるのか
  • 大胸筋による被覆が必要なのか
  • 脂肪注入を同時に行うべきか
  • まずインプラントのみで経過を見るべきか

を判断します。

10年後、20年後のお胸まで考える

豊胸手術では、手術直後の症例写真だけに目が向きがちです。しかし、患者様はそのお胸と何十年も付き合っていきます。

その間には、

  • 体重の増減
  • 妊娠や授乳
  • 乳腺や皮膚の加齢変化
  • インプラントの位置変化
  • 被膜拘縮
  • インプラントの交換
  • 脂肪注入後のボリューム変化
  • 他の体形手術による全身バランスの変化

などが起こる可能性があります。すべてを正確に予測することはできません。

それでも、初回手術の段階で必要のない剥離を避け、利用できる組織やレイヤーを残し、後から修正しやすい方法を選ぶことはできます。豊胸において大切なのは、今のお胸だけを見ることではありません

今できる治療をすべて行うのではなく、今必要な治療だけを行い、将来の選択肢を残しておく。

それが、10年後、20年後まで考えた豊胸手術の設計だと思います。

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