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なぜ、沖縄の人は韓国まで美容整形に行くのか?
監修医師
MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠
1989年、アメリカ生まれ。10歳より沖縄で育つ。日本とアメリカ、双方の文化や価値観に触れてきた経験を生かし、患者様一人ひとりが持つ異なる美意識や希望を尊重した診療を大切にしています。日本語・英語の両方で診療を行い、国内外の知見を取り入れながら、自然で長期的な美しさを目指した美容医療を提供しています。大手美容外科にて約8年間、美容外科・美容皮膚科診療に携わり、2024年にMSA美容外科を開院。
略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院
資格・所属学会
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAPS)関連会員
The Rhinoplasty Society 海外会員
American Academy of Cosmetic Surgery(AACS)正会員
日本美容皮膚科学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員
―「安いから」だけでは説明できない沖縄特有の事情
沖縄で美容医療をしていると、「韓国で受けようか迷っています」という言葉をかなり自然に聞きます。
東京で受けるか。沖縄で受けるか。韓国で受けるか。
患者さんの中では、この3つは私たちが思っているほど離れた選択肢ではないのかもしれません。
よく言われる理由は、「韓国は安いから」です。
もちろん、それも大きな理由でしょう。しかし沖縄という土地で美容医療を見ていると、私はそれだけではないように思います。
所得の問題。距離の問題。沖縄が島であること。そして、「美容整形を地元で受けたくない」という心理。
こうした条件が重なった結果、韓国美容が沖縄の人にとって非常に身近な選択肢になっているのではないでしょうか。
「安い」という言葉の裏側
美容医療について「韓国の方が安いから行く」と言うと、少し軽い話に聞こえます。
しかし、20万円と40万円、30万円と60万円。同じように見える治療に数十万円の価格差があれば、比較するのは当然です。
沖縄では、所得水準の低さが長く地域の課題となっています。さらに、ひとり親世帯の多さなど、女性を取り巻く経済的な事情も無視できません。
だから私は、価格差を無視できる人が、それほど多くない。
美容医療は自由診療です。生活に絶対必要なものではないからこそ、「同じような治療なら少しでも安いところで」という比較が起きます。
韓国美容の価格競争力と沖縄の経済環境は、切り離して考えられません。
沖縄には「隣の県」がない
しかし、私はむしろこちらの方が重要なのではないかと思っています。沖縄には隣県がありません。
当たり前の話ですが、美容整形という視点で考えるとかなり特殊です。
埼玉の人が「地元で美容整形をするのは少し嫌だな」と思えば、東京へ行けます。兵庫なら大阪、佐賀なら福岡へ行けます。電車に乗れば、もう別の県です。
美容整形には、普通の医療とは少し違う心理があります。
「職場の人に知られたくない」
「友人に言いたくない」
「クリニックから出てくるところを知り合いに見られたくない」
美容整形が一般的になった今でも、できれば地元から少し離れた場所で受けたいという人は一定数いると思います。
沖縄は良くも悪くも、人と人との距離が近い地域です。「知り合いの知り合い」が多い。
ところが沖縄には、電車で30分行けば着く隣県がない。
県外に出ようとした瞬間、飛行機になります。
どうせ飛行機に乗るなら、東京も韓国も「遠征」
沖縄から東京へ行くにも飛行機。大阪へ行くにも飛行機。福岡へ行くにも飛行機。そして韓国へ行くにも飛行機です。もちろん距離も料金も違います。しかし患者さんの心理としては、「飛行機に乗って美容整形を受けに行く」という意味で同じカテゴリーに入りやすい。
本州に住んでいる人にとって、「東京へ美容整形に行く」と「韓国へ行く」には、国内と海外という大きな壁があります。でも沖縄では、東京に行く時点ですでに飛行機に乗り、場合によってはホテルを取り、仕事の休みを確保します。
そこまで準備するなら、「だったら韓国でもよくない?」となっても不思議ではありません。しかも韓国なら、治療費が安い。旅行もできる。知り合いにも会わない。
そう考えると、患者さんにとっては十分合理的な選択です。
「海外だから遠い」とは限らない
私たちは無意識に、
国内=近い。
海外=遠い。
と考えています。
しかし沖縄から見ると、それは必ずしも当てはまりません。地図を広げれば、沖縄は東京だけを向いている土地ではありません。台湾も韓国も中国も近い。東アジアの中に沖縄があります。
だから沖縄の美容医療を考えるとき、「日本国内の美容医療市場」という枠だけで考えること自体が少し不自然なのかもしれません。
患者さんは県境どころか、国境を越えて比較しています。
Instagramの画面に国境はない
そしてSNSが、この距離をさらに縮めました。
患者さんのスマートフォンには、那覇のクリニックも、東京のクリニックも、江南のクリニックも同じ大きさで表示されます。症例写真も価格も口コミも、その場で比較できます。
Instagramの画面に国境はありません。
美容医療は以前より、「病院で医療を受ける」という感覚だけではなく、化粧品や美容室、旅行と同じように比較して選ぶサービスに近づいています。
そうなるほど、韓国との地理的距離が近い沖縄は、その影響を強く受けます。
福岡の本当の競争相手は、福岡ではない?
ここで福岡のことを考えると、さらに面白くなります。
美容医療業界では「福岡は激戦区」とよく言われます。天神や博多に多くの美容クリニックが集まり、お互いに患者さんを取り合っている。私たちはそう考えがちです。
しかし、本当に福岡のクリニック同士だけが競争しているのでしょうか。
福岡から韓国は非常に近い。
患者さんから見れば、
天神のAクリニック。
博多のBクリニック。
釜山のCクリニック。
江南のDクリニック。
全部が同じ比較対象になっていてもおかしくありません。
だとすると、福岡の美容医療が激戦区なのは、クリニック数が多いからだけではなく、韓国という巨大な美容医療市場がすぐ隣にあるからという側面もあるのではないでしょうか。
これは統計的に証明された話ではなく、私の仮説です。ただ、美容医療の商圏を県境だけで考える時代ではなくなっていることは確かだと思います。
沖縄では、その傾向がさらに強い
沖縄の場合、
所得。
島という地理。
飛行機移動。
韓国との近さ。
そして「地元で受けたくない」という心理。
これらがすべて同じ方向に働きます。
つまり、韓国へ美容整形に行くことを後押しする条件がかなり揃っている。
沖縄という土地そのものが、韓国美容と相性がいいのです。
ただ、韓国で実際に治療を受けた患者さんの話を聞くと
ここまで読むと、韓国へ行くのは非常に合理的に見えます。実際、そういう面もあります。韓国の美容医療は治療の選択肢が多く、価格競争力もあり、しっかり結果を出すクリニックも多い。
ただ、沖縄で診療をしていると、韓国で治療を受けた患者さんから、
「結果は悪くなかったんだけど、ちょっと怖かった」
という話を聞くことがあります。
1.リジュランだけのつもりが、全部やることになった
ある患者さんは、韓国でリジュランを受けるつもりで予約しました。
ところがカウンセリングで、ジュベルック、マイクロボトックス、ニードルRFまで勧められ、結局すべて同じ日に受けることになりました。翌日から顔はかなり腫れ、ダウンタイムは約2週間。
本人曰く、
「ダウンタイムが、超やばかった 笑」
そうです。
ただし、その後の肌は3か月くらい非常に調子が良かった。

ここが面白いところです。
結果が悪かったわけではありません。むしろ、しっかり結果が出た。
日本では「なるべく腫れないように」「仕事に支障がない範囲で」と治療を組み立てることがあります。一方、韓国ではクリニックによって、やるならしっかりやる。ダウンタイムも出る。その代わり結果もしっかり出す。そういう考え方が強い場合があります。
どちらが正しいという話ではありません。
ただ、患者さんが「少し肌をきれいにしたい」と思っていたのに、クリニック側が「せっかくなら最大限やりましょう」と考えていたら、そこには大きなズレが生まれます。
2.その医師に会いに行ったのに、その医師がいなかった
別の患者さんは、SNSで症例を見続けていたある医師を目当てに韓国まで行きました。
飛行機を取り、ホテルを取り、その先生で予約。ところが当日、診察室に入ってきたのは別の医師でした。
確認すると、
「その先生は本日出勤していません」
とのこと…。
患者さんとしては帰りたい。しかし、この価格で施術できるのは今日だけ。治療しなければキャンセル料もかかる。飛行機代もホテル代もすでに払っている。結局、そのまま別の医師で施術を受けました。
幸い、効果には問題ありませんでした。
それでも本人の感想は、
「結果は悪くなかったけど、後味が悪かった」
でした。

美容医療では、クリニックを選んでいるようで、実際には医師を選んでいる患者さんが多くいます。特にSNS時代はそうです。症例写真を見たり、動画などで人柄を見たりして「この先生にお願いしたい」と思って予約する。
だから海外で治療を受けるなら、クリニック名だけではなく、誰が診察し、誰が施術するのかまで確認した方がいいと思います。
3.カウンセリングだと思ったら、そのまま施術が始まった
もう一人の患者さんは、クリニックへ行き、名前と予約を確認されたあと、すぐに処置室へ案内されました。
本人は、
「ここからカウンセリングかな」
と思っていたそうです。
ところが、そのまま施術の準備が始まりました。
担当の医師は日本語が話せない。患者さんも韓国語が話せない。何か聞きたい。でも聞けない。
そのまま施術が始まり、施術が終わり、会計をして終了。

医学的な問題はありませんでした。
ただ、患者さんは、
「最初から最後までずっと不安だった」
と言っていました。
これも、治療結果とは別の問題です。
3人とも、「失敗」はしていない
この3つの話の面白いところは、誰も「失敗した」とは言っていないことです。
一人目は、むしろ肌の調子が良くなった。
二人目も、施術効果には問題なかった。
三人目も、医学的なトラブルはなかった。
つまり、これは、
「韓国美容は危険です」
という話ではありません。
むしろ逆で、治療結果が良いことと、安心して医療を受けられることは、同じではないという話です。
患者さんが美容医療を比較するとき、どうしても価格と症例写真に目が行きます。
でも実際に自分が治療を受けるとなると、
誰が診察するのか。
誰が施術するのか。
希望していない治療を断れるのか。
自分の言葉で質問できるのか。
帰国してから何か起きたらどうするのか。
こういうことが急に重要になります。
「近い」の意味をもう一度考える
沖縄から韓国は近い。確かに近いです。飛行機に乗れば、すぐ着きます。
しかし美容医療における「近さ」は、飛行時間だけでは測れません。
翌日、腫れがひどくなったときに診てもらえるか?
傷が気になったときに診察できるか?
「これは大丈夫ですか?」と自分の言葉で聞けるか?
自分を治療した医師に、もう一度診てもらえるか?
医療には、物理的な距離とは別の距離があります。
では、沖縄の美容クリニックは韓国より安くすればいいのか
韓国へ患者さんが流れるのであれば、
「それなら韓国より安くしよう」
と考えるかもしれません。
私は違うと思います。価格だけで韓国と競争すれば、いつか限界が来ます。
美容医療は、施術をして終わりの商品ではありません。
特に外科手術では、
術前診察。
手術。
術後診察。
抜糸。
腫れや痛みへの対応。
合併症への対応。
長期的な経過観察。
ここまで含めて医療です。
だから大切なのは、「韓国より安いか」ではなく、「沖縄で受ける意味があるか」だと思っています。
何かあった翌日に診てもらえる。
不安になったときにすぐ相談できる。
自分の言葉で医師と話せる。
そして自分を治療した医師が、その後も経過を見てくれる。
これは地元だからこそ提供できる価値です。
沖縄の美容外科が売るべきもの
これから沖縄の美容外科が考えなければならないのは、韓国と同じ価格にすることではありません。
必要なのは、
「なぜ沖縄で受けるのか」という理由を作ること。
価格だけなら韓国に負ける治療もあるでしょう。
症例数では東京や韓国に負ける分野もあります。
しかし、
診察の丁寧さ。
治療の設計。
医師との距離。
術後のフォロー。
何か起きたときにすぐ診察できる安心感。
そこは地元の美容医療が強くなれる部分です。
韓国に勝つ必要はありません。
東京に勝つ必要もありません。
沖縄で受けることに、沖縄で受けるだけの意味があればいい。
美容医療の競争相手は、隣のクリニックではなくなった
美容クリニックを経営していると、つい近くのクリニックを見てしまいます。
隣はいくらなのか。
あそこは何を導入したのか。
あの先生はどんな症例を出しているのか。
でも患者さんは、もっと広い世界を見ています。
沖縄の患者さんが比較しているのは、那覇のクリニックだけではありません。
東京。大阪。福岡。ソウル。
すべてが同じスマートフォンの画面に並んでいます。
美容医療の商圏には、もう県境も国境もありません。
だからこそ私たちが考えなければならないのは、
なぜこの医師なのか。
なぜこのクリニックなのか。
なぜ東京でも韓国でもなく、沖縄なのか。
そして最後には、やはりここに戻ってくるのだと思います。
飛行機で近いことと、医療として近いことは、同じではありません。
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