トルコ研修(Teo-Nayak Masterclass)を終えて

監修医師

MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠
略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院
所属学会
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
日本美容皮膚科学会 正会員
まず、なぜトルコへ?
昨年の12月に東京のクリニック見学に行った際、そこの院長先生の薦めで教えてもらいました。「5月にTeo-Nayakがあるから、絶対見た方がいいよ」と。あのDr. Teoの手術が見学できるのか?夢のようなお話でした。
Dr. Cakir や Dr. Göksel、Dr. Coşkun など、トルコは鼻形成の名医が多い国です。鼻形成の技術だけでなく、論文を書いて報告したり、技術をシェアしたりと積極的な医師が多い印象です。 そんな中、今回のトルコ研修は最近話題のDr. Teoman Doğanの手術を学ぶことが最大の目的でした。
美容外科の手術は大学時代や一般病院では一切習いません。そのため、「口伝の秘」として扱われていることが多く、それを学ぶかどうかはその人次第なのです。資格や肩書きにこだわる医師もいますが、何よりも「いつまでも学ぶ姿勢」と「フットワークの軽さ」が大切だと思います。
自分よりも遥かにベテランも今回のMasterclassにたくさん参加されており、中には、すでに地方では名医のような扱いをされている医師もいましたが、その人でも学びに来ている、一生涯勉強の姿勢だからこそ技術向上ができるというのが身にしみてわかりました。
鼻形成の世界は、混乱が多いです。たくさんの論文や書籍もありますが、鼻の解剖に対する共通認識や術式などはさまざまな考え方や流儀が入り混じり、中にはお互いに矛盾するような考え方もあります。患者様にこういうことを言うのも気が引けますが、鼻形成の世界はまだまだ発展途上なのです。
さて、なぜ Dr. Teoman の手術を学びたいのか?それは、混沌とした鼻形成の世界に徹底した一つの手法、Teorhinoplastyを投じたからです。
Dr. Teoman による書籍、”Teorhinoplasty A Minimalist Approach 2nd edition “は非常に特殊で、鼻形成の技法をあれこれと書いているのではなく、Dr. Teomanの鼻形成(Teorhinoplasty)はこれだ!という書き方をされています。20個のステップで構成されておりますが、とてもわかりやすく、一切迷いがありません。上述でも書いたように、鼻形成の世界にとっては一つのビーコンのような存在になっているのです。

もう一つの目的
そして、トルコ研修のもう一つの目的。それは、トルコ風呂のハマムに行くことです。
冗談です…笑
もう一つの目的、それはDr. Nayak (米国)のDeep plane face liftの手術を学ぶことでした。
Dr. Teomanだけの手術研修は単独で行われていることが多いのですが、フェイスリフトの名医であるDr. Nayak の手術も同時に学べると言う機会はなかなかありません。
そもそもDeep plane face liftとは何なのか? 従来のfaceliftでは、皮膚やSMAS層を剥離して引き上げるのが一般的ですが、Deep plane faceliftでは、靭帯を処理することで、より深く、より強力なリフトアップが可能になります。
私とDeep plane faceliftの初めての出会いは、Dr. Andrew Jacono による書籍 “The Art and Science of Extended Deep plane facelifting” でした。去年のJSAPS(日本美容外科学会)でも話題でした。今後は、これがfaceliftの主力となることが予想されます。
さて、Dr. Nayak のdeep plane faceliftはなぜ特殊なのか?それは、faceliftだけでなく、deep neck liftとbrow lift(額リフト)も同時に行うことを推奨しているからです。
Dr. Nayak はとくに首のリフトに精通しており、本人は” neck sculpting(首の彫刻)” と表現しております。 Dr. Niamtu による書籍 “Cosmetic Facial Surgery 2nd editon” でも首のリフトのコメンテーターとして寄稿をしており、昔から気になっていた医師でした。QMPのvideoシリーズでも、Dr. Nayakのリフト術の勉強をしていたため、それを間近で見て、教えてもらえるのは絶対に行くべき勉強会だったのです。
ちなみに、Dr. Nayak のdeep plane facelift の1件あたりのおおよその価格は、約12,000,000 円です。桁の間違いではありません。本当の価格です。その手術が2年先まで予約待ちと言う状況です。1日に2件はこなすとも言っていたので…想像すると恐ろしいです。ただ、これは外国らしい考えだと思いました。自分の技術は、これだけの価値があるという自負とプライド。かっこいいです。

偶然の出会い
今回の勉強会は3日間のミッチリ研修でした。初日は座学の講義、2日目はDr. TeomanとDr. NayakのLive Surgeryの見学、3日目はフレッシュキャダバー(新鮮なご遺体)に対しての実技研修。
その初日に隣にたまたま座ったのが、ベネズエラ出身のDr. Gabriel Paezでした。鼻形成をやっている医師でしたら誰もが知っている名前、Paez。私はその先生に質問しました、「先生は、Dr. Floiran Paezのこと知っていますか?」と。そしたら、回答が「あ、うん、従姉妹!」。なんとも愉快な南米の先生でした。Dr. Paezは会場で私を見かけるたびに「Hey, Bro!」と声をかけてくれて握手をして、とにかく面倒見のいい、兄貴分の存在でした。初日の講義でも一緒でしたが、3日目の実技研修でもパートナーとして組むことになり、とにかくありがたい出会いでした。
Dr. Paezは、地元のベネズエラでは十分名医の領域に入っております。Miss. Universeのベネズエラ代表の担当医もしており、鼻形成については申し分ない肩書きを持っております。それでも、ここで研修をしているその姿勢。
Dr. Paez 「鼻形成はもちろん自信あるけど、push downはもっと勉強したいし、Dr. Teomanの手術を見るのは2回目だけど、見るたびに勉強となることがある」。2回目なのかい…笑
Dr. Paez 「あとは、フェイスリフト。これは解剖とかまだまだわからないから、しっかり勉強しないといけない。俺たち病気の治療をするときは、SMASとか考えないからね。癌で切除するなら、全部切除するし、美容外科手術は全然違う。」

さて、3日目の実技研修。鼻形成については、さすがDr. Paezでした。ベネズエラで行っている治療のお話をしながら、どのようにTeorhinoplastyを部分的に導入できるかを常に考えておりました。ベネズエラは鼻の軟骨が脆い方も多く、時にはアジア系の人種もいるとのことで、鼻形成の剥離層は常に軟骨膜上とのことでした。私も同じようにしております。
また、前回のドクターコラムで紹介しました”Fusion Sling”についてもわかっており、次の時代はそれが来ると言っておりました。名医でも、常に情報の最先端を行っております。
他にも、VAR(vertical alar resection)をアドリブで実技研修で加えたり、なぜそれがいいのかも説明してくださり、Teorhinoplasty+Paezrhinoplastyと言う研修内容でした。ご遺体での鼻形成は難しかったです。組織も弱くなっているのですが、何よりも出血が無いため、レイヤーの判別が生体よりはやや難しい場面もありました。
Deep plane faceliftでは、私がリードをしました。二腹筋から顎下腺を探し出したり、その剥離、お顔では眼輪筋下、大頬骨筋上などの的確なランドマークを見つけ出し、Deep planeのSMAS flapの作成、Dr. Paezには「Nayak ver2だね」と言われました笑 やっぱり面倒見の良い兄貴分は、褒めるのも上手でした。
他にも指導者のDr. Koehler, Dr. Rodrigoと言う先生方がおりました。こちらの先生方には、Dr. Nayak が行っているpreservation deep plane facelift (sailboat法)や、post auricular SMAS transposition flapと言う技法なども教えてもらいました。Sailboat法はSMAS下に入る位置が非常に際どいので、すぐには導入しようとは思いませんでしたが、剥離しないといけない皮膚の量などが格段に減り、ダウンタイムも軽減されるのです。Dr. Koehlerは自身のことをPlastic surgeonではなく、Cosmetic surgeonと名乗っているのもかっこいいと思いました。
Deep plane faceliftでも、私とDr. Paezはご遺体の傷を完全に閉じるまで終えませんでした。他の研修者は顔の中の処理が終わったら、外の傷までは縫わず、さっさと帰っておりましたが、私とDr.Paezは綺麗に仕上げてあげて、顔も拭いてあげ、ドッグイヤーの処理までこだわり、研修施設に残る最後の一組でした。とくにこうしようと言うわけでなく、我々は暗黙の了解で当たり前にやっていたのですが、他の南米の先生も綺麗に傷を閉じておりました。傷を閉じないのがダメではないのですが、ご遺体に対する考え方が南米と日本とで、似ている部分があるのかもしれません。色々と考えさせられました。
いつでも、連絡してくれと最後は連絡先を交換し、お別れをしました。また、何かの勉強会で会えたら嬉しいです。ベネズエラ行ってみようかな?
何を学んだのか?
鼻形成については Dr. Teoman が強調していた、”know the limits” (限界を知ること) でした。
よく、肋軟骨でゴリゴリな鼻形成をするところが見られますが、直後は良くても、無理して形を変えると、後々から必ず曲がったり、変形をするものです。もちろん、肋軟骨が必要なときもありますが、なんでも適材適所というのがあるという意味ですよね。
Dr. Teomanはこれまで色々と試し、試行錯誤し、見てきた経験者だからこそ言えることだと思います。元々持っている鼻の皮膚が許容する範囲での変化、know the limitsです。
他に学んだことといえば、コミュニケーションです。海外の先生は積極的に話しかけ、色々と話題を盛り上げます。私は幸い、Dr. Paezが愉快なお兄さんとして色々と教えてくれましたので、私も次の機会ではそのようにコミュニケーションを取りたいと思います。英語ができると言うのがすごいとかではなく、海外では当たり前。日本が異常なのです…笑
もう一つ学んだことは、何よりも質問をすることです。とにかく、わからないことは質問しまくりました。講義中、実技研修中、気になることがあれば質問をしました。他の医師たちも、積極的に質問を投げかけてました。それに答えてくれたDr. Teoman, Dr. Nayak, Dr. Koehler, Dr. Rodrigo, そしてMy bro のDr. Paez, 感謝です。
Dr. Teomanと Dr. Nayakの術式は一日では作り上げたものではありません。彼らは講義中に何度も言っておりましたが、⚪︎⚪︎法も試したし、△△法も試したし、また⚪︎⚪︎法に戻したけど、今は××法をメインで使っている。常に、自分の技術に対しても、よりよくできる方法はないのか、改善法を模索したり、疑問を持って、自分に質問を問いかけているのです。確かに、Dr. Nayakの数年前の書籍でのneckliftの手法と、今とでは全然違います。
これこそが、美容外科医として歩むべき道なのだと痛感しました。今できる最善を尽くしながら、より良くできないかを常に考える。
5月後半はJSASの日本美容外科学会、6月は東京で福田先生・菅原先生の勉強会、8月は韓国のジョン先生の鼻形成術の見学会。これからも、学びの道のりは長いです。
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