日本の「小顔文化」

監修医師

モレロ オースティン誠

MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠

略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院

所属学会
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAPS)関連会員
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
The Rhinoplasty Society 海外会員
アメリカ美容外科学会(AACS)海外会員
日本美容皮膚科学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員

日本の美容医療では、「小顔になりたい」という希望を非常によく耳にします。

エラを小さくしたい。
頬のボリュームを減らしたい。
脂肪を取りたい。
輪郭をもっと細くしたい。

顔が小さく、下顔面が細いほど、目が相対的に大きく見えます。そのため、日本の小顔への執着は、二重まぶたや大きな目を求める文化と、ある意味では同じ方向を向いているのだと思います。

しかし、顔は小さくすればするほど、美しくなるのでしょうか?

私は違うと思います。

なぜ私たちは「大きな目」をかわいいと感じるのか

ここで視点を変えましょう。顔が大きい、小さいではなく、目元に。

なぜ、人間は大きな目に対して好意的なのか?

人間が、大きな目、丸みのある頬、小さな鼻や顎に「かわいらしさ」を感じる背景には、単なる流行だけではなく、生物学的な要素もあると考えられています。動物行動学では、乳幼児にみられる大きな目、丸い顔、高い額、小さな鼻や顎といった特徴を「ベビースキーマ」と呼びます。

こうした特徴を見ると、人はその対象をかわいいと感じ、守りたい、世話をしたいという感情を抱きやすくなります。これは、まだ自分一人では生きられない赤ちゃんを、周囲の大人が保護し、育てるために発達した反応の一つと考えられています。研究でも、乳幼児らしい顔の特徴が強いほど、かわいらしさや養育意欲が高く評価され、脳の報酬系にも影響することが報告されています。

このように、大きな目をかわいいと感じること自体は、不自然なことではありません。他の哺乳類でもこれは見られ、種を超えて可愛く感じることもあります。チワワやトイプーなどの愛玩犬はそういう遺伝的にプログラムされた心理から芽生えたものなのです。

そして場合によっては、その「かわいい」と思う心理は次元を越えることもあります。どういうことか?
それは二次元、そう、アニメや漫画文化もそうです。アニメのキャラクターは大体、目が大きく、顔とはアンバランスに描かれております。気づいていましたか?

どちらの坊主も、小顔という部類に入るとは思いますが、目が大きい方が「可愛く」感じますよね?

「目を大きくする」のではなく、「顔を削っている」

目の大きさそのものには限界があります。そこで、二重幅を広げるだけではなく、頬を減らす、エラを細くする、顎下を減らすなど、周囲の面積を小さくすることで、相対的に目を大きく見せようとする治療が行われます。

確かに、若く、皮膚の弾力が十分にあり、咬筋が強く発達している方では、エラボトックスによって下顔面がすっきりし、バランスが良くなることがあります。しかし、適応を考えずに何度も繰り返せば、すべての方がきれいになるわけではありません

筋肉による横方向のボリュームが減少すると、それまで目立たなかった皮膚の余りや、フェイスラインのもたつきが表面化することがあります。特に皮膚の弾力が低下し始める年代では、「エラは小さくなったけれど、口元やフェイスラインが下がって見える」という状態が起こり得ます。つまり、顔を小さくする治療が、結果として顔を老けて見せることもあるのです

このことを患者様に説明するとき、よくアンジェリーナジョリーというハリウッド女優を例えとして出しますが、彼女のエラは非常に発達しております。そのため、たるみは実際にあっても、見えにくいです。(他にも治療はしているかもだが…)

むしろ、全体的に皮下脂肪によるボリュームが減っているのがわかりますね。額も頬も首も、なんとなく萎んでいます。それでも骨格とパーツが綺麗に調和しているので、魅力があります。

目を小さくしてみると

アンジェリーナさんと細めの坊主さんを合わせてみました。ごめんなさいね。

さて、目を小さくすると、単に目元の存在感が弱くなるだけではありません。顔の中央に視線を集める力が低下し、頬や口元、輪郭といった周囲の要素が相対的に目立つようになります。その結果、同じ顔であっても、華やかさや若々しさが弱まり、少し疲れて見えたり、年齢を重ねて見えたりすることがあります。

反対に、目が大きく見える顔では、視線が目元へ自然に集まります。これは、乳幼児の大きな目に「かわいらしさ」や「守ってあげたい感情」を抱きやすいという、人間の生物学的な反応とも関係しています。

アンジェリーナ・坊リー?

これら画像が示すのは、目が大きければ必ず美しい、目が小さければ魅力がない、ということではありません。顔の魅力は、目の大きさだけではなく、骨格、輪郭、頬の立体感、口元、表情など、全体のバランスによって生まれます。

問題は、目を大きく見せるために、周囲の組織を際限なく減らしてしまうことです。

顔は、パーツを単独で小さくすれば美しくなるものではありません。一つの要素を強調するために、顔を支えているボリュームまで失えば、かえって老けた印象や不自然な輪郭につながることがあります。

美しさとは、最大化ではなく、調和です

最大の効果ではなく、最善の選択

それが美容医療の示すべき道です

目を大きく見せることも、顔を小さくすることも、それ自体が目的になってはいけません。その人の骨格や年齢に合った比率を保ちながら、顔全体として自然に整っていることが、長く続く美しさにつながります。

小顔治療を続けるほど、効果が短くなる悪循環

このコラムのきっかけとなった、30代後半の患者様について。

ご相談いただいた患者様は、目元が小さめで、非常に綺麗な骨格を持っておりました。
しかし、顔のもたつき、特にブルドッグのように見える(本人の表現)フェイスラインを気にされていました。

これまで、エラボトックス、糸リフト、HIFU、オンダリフトなどの治療を定期的に受けてこられましたが、最近は治療効果の持続が短くなっていると感じていました。

引き締め治療を受ける。
少し改善する。
またすぐにもたつきが気になる。
さらに強い治療や追加の施術を受ける。

この繰り返しです。

しかし、現在の問題が単なる「皮膚の緩み」ではなく、顔を小さくする治療を長期間続けたことで、下顔面のボリュームバランスが崩れていることにあるなら、引き上げる治療だけを繰り返しても根本的な解決にはなりません。

エラボトックスを20代の頃と同じように続ければ、フェイスラインの横幅は減っても、余った皮膚の存在感が強くなる可能性があります。そこへ糸リフトや機械治療を繰り返しても、効果が一時的になりやすくなります。

必要なのは、さらに顔を小さくすることではなく、これ以上失ってはいけないものを見極めることです。

このことをお話しすると非常に納得されておりました。
自分のことだと、なかなか気づきにくいことですが、それを紐解いてあげるのが美容外科医の仕事です。

若い頃に似合った小顔が、ずっと似合うとは限らない

20代の顔と、30代、40代の顔では、必要な治療が変わります。

若い頃は、筋肉や脂肪のボリュームが多く、少し減らすことで輪郭が整うことがあります。

しかし、年齢とともに皮膚の弾力が低下し、脂肪や骨格のボリュームも変化します。その段階で若い頃と同じように「とにかく細くする治療」を続けると、顔を支えていた立体感まで失われ、かえって疲れて見えたり、口元のたるみが強調されたりします。

年齢を重ねた顔に必要なのは、必ずしも引き算ではありません

残すべき場所は残す。
引き締めるべき場所は引き締める。
足りない場所には、必要最小限のボリュームを補う。

その見極めと判断が重要なのです。

今回提案した治療方針

今回の患者様には、エラボトックスを今後まったく禁止するのではなく、漫然と繰り返すことを控えるようにお伝えしました。咬筋の回復と下顔面のボリュームをある程度温存しながら、ボルニューマなどの高周波治療によって皮膚と皮下組織の引き締めを行います。

また、顎が小さく後退して見える場合には、顔全体をさらに細くするのではなく、顎へのヒアルロン酸注入によって輪郭の重心を整える方法があります。

顎先が適切に前方へ形成されると、フェイスラインが自然につながり、顔を削らなくてもすっきりと見えることがあります。

ほうれい線についても、単に溝だけを埋めるのではなく、顔全体のボリューム、骨格、皮膚の状態を確認したうえで治療を検討します。

目標は、引き算することではなく、その方の骨格や年齢に合った、自然で安定した輪郭を取り戻すことです。

美容医療は、顔を流行の型に押し込むためのものではありません。

何を減らすのかを考える前に、何を残すべきなのかを考える。

これからの美容医療には、その視点が必要だと思います。

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