酒さ・赤ら顔に「スキンボトックス」は効果がある?
監修医師
MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠
略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院
所属学会
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAPS)関連会員
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
The Rhinoplasty Society 海外会員
アメリカ美容外科学会(AACS)海外会員
日本美容皮膚科学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員
皮脂・毛穴改善から考える、肌を「鎮静する」酒さ治療
スキンボトックスは、もともと美容皮膚科の領域では、皮脂の分泌を抑える、毛穴を目立ちにくくする、肌表面のテカリを改善する、肌のキメを整えるといった目的で行われることが多い治療です。
通常のボトックス治療は、表情ジワの原因となる筋肉の動きを弱める目的で行います。一方、スキンボトックスは、皮膚の浅い層に細かくボツリヌストキシンを注入することで、筋肉を強く止めるのではなく、皮膚表面の皮脂腺、汗腺、毛穴、神経血管反応などに穏やかに作用させることを目的とします。
そのため、スキンボトックスは「シワを止める治療」というよりも、「肌表面の過剰な反応を落ち着かせる治療」と考えるとわかりやすいです。
実際、ボツリヌストキシンAの皮内注射は、美容皮膚科領域で肌の質感、小ジワ、毛穴、皮脂分泌の改善を目的に行われており、皮脂分泌にアセチルコリンが関与している可能性や、ボツリヌストキシンが皮脂腺と自律神経終末のコリン作動性伝達に影響する可能性が報告されています。
近年、この「皮脂腺を落ち着かせる」「神経血管反応を落ち着かせる」という作用に注目し、酒さや赤ら顔に対してスキンボトックスを応用する報告が増えています。
酒さや赤ら顔でお悩みの方の中には、レーザー、ピーリング、シルファーム、肌育注射、内服薬、外用薬など、さまざまな治療を試してきたものの、「赤みがなかなか引かない」「肌が敏感で治療後に赤くなりやすい」「一時的には良くなるけれど、また戻ってしまう」と感じている方も少なくありません。
MSA美容外科では、酒さ・赤ら顔・肌の赤み・皮脂の過剰分泌・毛穴・肌の不安定さに対して、患者様の肌状態によってはスキンボトックスを検討することがあります。
酒さに対するボツリヌストキシン治療は、日本国内では保険適応の標準治療ではありません。米国などでも、酒さに対するボトックスは承認適応ではなく、自由診療・適応外使用として行われることがあります。しかし、近年は酒さの赤みやほてりに対するボツリヌストキシンの有効性について、複数の臨床研究やレビュー論文が報告されるようになっています。

実際の経過:酒さに対するスキンボトックス後、赤みが落ち着いた症例
2026年6月30日に、酒さによる赤みや肌の不安定さの改善を目的として、スキンボトックスを行った患者様がいらっしゃいました。7月7日、治療から約1週間後に来院された際、肌の調子が良く、赤みも以前より落ち着いている印象がありました。
患者様ご本人からも、
「これまで肌育注射やシルファームなども試してきたけれど、今が一番肌の状態が良さそう」
というお話がありました。
もちろん、1例の経過だけでスキンボトックスがすべての酒さに効果があると断定することはできません。酒さのタイプ、赤みの原因、皮脂の状態、肌のバリア機能、外用薬や内服薬の使用状況によって、治療効果には個人差があります。
しかし、この症例は、酒さや赤ら顔の治療において非常に大切な考え方を示しているように思います。
それは、肌治療は必ずしも「足し算」だけではないということです。
酒さは単なる赤みではなく、慢性的な炎症と神経血管反応の病態
酒さは、単に顔が赤いだけの状態ではありません。医学的には、慢性的な炎症、血管の過剰な拡張、神経の過敏性、自然免疫の異常、皮膚バリア機能の乱れ、皮脂腺や毛包周囲の炎症、皮膚常在微生物との関係などが複雑に関与する皮膚疾患と考えられています。
酒さでは、少しの刺激で赤みが出る、ほてる、ヒリヒリする、化粧品がしみる、温度変化で顔が赤くなる、皮脂が増える、肌荒れしやすい、といった症状が出やすくなります。
つまり、酒さの肌は「赤い肌」というよりも、神経・血管・炎症反応が過敏になり、常に興奮しやすい状態にある肌と考えるとわかりやすいです。
このような肌に対して、いつも強いレーザー、強いピーリング、強い刺激治療を重ねればよいとは限りません。むしろ、まず必要なのは「活性化」ではなく「鎮静」である場合があります。

なぜボトックスで酒さの赤みが落ち着く可能性があるのか
ボトックスは、神経から放出されるアセチルコリンという神経伝達物質の働きを抑える薬剤です。
一般的には、表情ジワの原因となる筋肉の動きを弱める治療として知られています。しかし、皮膚の浅い層へ細かく注入するスキンボトックスでは、筋肉を強く止めるのではなく、皮膚表面の神経・血管・皮脂腺・汗腺などに関連する過剰反応を抑えることが目的になります。
酒さでは、神経血管反応が過敏になっており、温度変化、紫外線、アルコール、香辛料、ストレス、摩擦、スキンケア刺激などによって血管が拡張し、赤みやほてりが出やすくなります。
ボツリヌストキシンは、この神経血管反応に関わる神経伝達を抑えることで、過剰な血管拡張やフラッシングを落ち着かせる可能性があります。また、酒さの方の中には、赤みだけでなく、皮脂が増えやすい、毛穴が目立つ、肌がベタつく、炎症性のブツブツが出やすいという方もいます。そのような場合、皮脂腺を落ち着かせるという視点は非常に重要です。
スキンボトックスは、皮脂分泌や毛穴改善を目的として行われてきた治療であり、その延長として、酒さに伴う皮脂の過剰反応、毛穴の目立ち、肌のほてり、赤みを落ち着かせる可能性があります。
スキンボトックスは「肌を活性化する治療」ではなく「肌を鎮静する治療」
美容皮膚科では、肌質改善というと、どうしても「刺激して再生させる」「成分を入れる」「熱を加える」「剥離する」といった足し算の治療が中心になりがちです。
肌育注射
シルファーム
ポテンツァ
レーザー
ピーリング
RF治療
ニードル治療
水光注射
これらは、肌に一定の刺激を加え、その修復反応を利用して肌質改善を目指す治療です。毛穴、小ジワ、ハリ、ニキビ跡、弾力低下などに有効な場面があります。しかし、すべての肌が刺激を求めているわけではありません。
酒さ、赤ら顔、敏感肌、肝斑傾向のある肌、炎症後色素沈着を起こしやすい肌、バリア機能が乱れている肌では、攻める治療がかえって炎症を増やし、赤みや色素沈着を悪化させることがあります。
MSA美容外科では、肌治療を「足し算」だけで考えません。
何かを入れる。
何かを当てる。
何かを剥がす。
何かで刺激する。

それだけが肌治療ではありません。
肌の状態によっては、まず必要なのは、鎮静です。
赤みを落ち着かせる。
皮脂腺を落ち着かせる。
炎症を落ち着かせる。
神経血管反応を落ち着かせる。
バリア機能を守る。
摩擦を減らす。
肌を休ませる。

このような「鎮静の治療」が、結果的に最も肌をきれいに見せることがあります。
色素沈着治療でも、攻めるより守る方が良いことがある
この考え方は、酒さや赤ら顔だけではありません。色素沈着治療でも同じです。
シミ、くすみ、炎症後色素沈着、肝斑傾向のある肌では、レーザーやピーリングで強く攻めるほど良いとは限りません。むしろ、刺激が強すぎると炎症が起こり、その炎症がメラニン生成を促進し、色素沈着が濃くなることがあります。
特に、炎症後色素沈着や肝斑傾向のある肌では、レーザーやピーリングを強く行うよりも、導入治療、保湿、抗炎症、紫外線対策、摩擦対策、バリア機能の回復を優先した方が、結果的に肌が安定し、色むらが改善しやすいことがあります。
肌治療は、常に「攻めれば勝ち」ではありません。
ときには、守ること。
落ち着かせること。
刺激を減らすこと。
皮膚を休ませること。
これが最も大切な治療になることがあります。
沖縄で酒さ・赤ら顔治療を考えている方へ
沖縄は紫外線が強く、湿度も高く、汗や皮脂、マスク、摩擦、日焼け止め、スキンケア刺激などが重なりやすい環境です。そのため、酒さや赤ら顔、敏感肌、皮脂による肌荒れ、炎症後色素沈着が悪化しやすい方もいます。
那覇市のMSA美容外科では、酒さ・赤ら顔・肌の赤み・毛穴・皮脂・肌質改善に対して、スキンボトックス、肌育注射、シルファーム、レーザー、ピーリング、導入治療、保湿・鎮静ケアなどを、患者様の肌状態に合わせて組み合わせています。
大切なのは、流行っている治療をそのまま行うことではありません。
今の肌に必要なのが、刺激なのか。
鎮静なのか。
足し算なのか。
引き算なのか。
攻める治療なのか。
守る治療なのか。
この見極めが、酒さや赤ら顔の治療では非常に重要です。
MSA美容外科では、足し算だけでなく「鎮静の治療」も大切にしています
MSA美容外科では、肌治療を単純にメニュー名で決めるのではなく、肌の状態を診察したうえで、治療方針を考えます。
肌育注射で成分を入れるべき肌なのか。
シルファームやRFで刺激を入れるべき肌なのか。
レーザーで赤みや色素にアプローチすべき肌なのか。
ピーリングで角質や皮脂を整えるべき肌なのか。
それとも、まずはスキンボトックスや導入・保湿・鎮静ケアで肌を落ち着かせるべき肌なのか。
同じ「肌質改善」でも、必要な治療は患者様によって異なります。
酒さや赤ら顔の肌は、すでに炎症や神経血管反応が過敏になっていることがあります。その状態で刺激治療を重ねると、かえって肌が不安定になることもあります。
だからこそ、MSA美容外科では、足し算だけでなく、鎮静の治療も大切にしています。
肌を良くするために、何かを足す。
それも大切です。
しかし、ときには、肌を落ち着かせる。
反応を鎮める。
刺激を減らす。
炎症を抑える。
皮脂腺を落ち着かせる。
このような治療こそが、その方にとって最も必要な肌治療になることがあります。
まとめ:酒さ・赤ら顔治療は「攻める」だけでなく「鎮静する」時代へ
酒さや赤ら顔に対するスキンボトックスは、まだ標準治療として確立された治療ではありません。日本国内でも保険適応ではなく、自由診療・適応外使用の治療です。
しかし、近年の研究では、酒さの持続する赤み、ほてり、フラッシングに対して、ボツリヌストキシン皮内注射が有効である可能性が報告されています。特に、神経血管反応や皮脂腺の過剰な働きを落ち着かせるという点で、スキンボトックスは「鎮静系の肌治療」として注目されています。
肌治療は、必ずしも足し算だけではありません。
肌育注射で成分を足す。
レーザーで反応を起こす。
ピーリングで剥離する。
RFで熱を入れる。
それらが必要な肌もあります。
一方で、酒さや赤ら顔、敏感肌、炎症後色素沈着を起こしやすい肌では、まず肌を落ち着かせることが重要な場合があります。
MSA美容外科では、患者様の肌状態を見極めながら、足し算の治療だけでなく、鎮静の治療も大切にしています。
酒さ・赤ら顔・肌の赤み・皮脂・毛穴・肌の不安定さでお悩みの方は、まずは現在の肌状態を正しく診断し、攻めるべきか、守るべきか、鎮静すべきかを一緒に考えていきましょう。

酒さに対するボトックスのエビデンス
酒さに対するボツリヌストキシン治療は、まだ標準治療として確立されたものではありません。しかし、近年は酒さの赤みやほてりに対する治療選択肢として、複数の研究が報告されています。
2022年に発表された研究では、紅斑毛細血管拡張型酒さの患者16名に対して、皮内ボツリヌストキシンA注射を行い、持続する赤みやほてりの改善、安全性、効果持続期間が評価されました。この研究では、治療1か月後に紅斑とフラッシングの改善が認められ、フラッシングやQOLの改善は3〜6か月程度持続する傾向が報告されています。
また、同研究では、酒さは顔面中央部に生じやすい慢性再発性の炎症性疾患であり、顔面血管と神経が関与する疾患として説明されています。さらに、異常な自然免疫や神経血管調節が病態に関与するとされています。
2021年に発表されたシステマティックレビューでは、酒さに対してボツリヌストキシンを使用した9研究が検討されました。そのうち2研究はランダム化比較試験であり、合計130名の患者が含まれていました。すべての研究でベースラインと比較した症状・所見の改善が報告され、有害事象は一過性かつ自己限定的であったとされています。ただし、症例数の少なさ、研究デザインの不完全さ、フォロー期間の短さが限界として挙げられています。
さらに、2025年に発表されたスコーピングレビュー・メタ解析では、酒さの顔面紅斑に対するボツリヌストキシンA皮内注射に関する7研究、合計167名の患者が解析されました。2つのランダム化比較試験を対象としたメタ解析では、治療3か月後の紅斑スコア改善が示されています。一方で、研究デザインのばらつき、症例数の少なさ、軽度の顔面麻痺や注射部位の紫斑などの有害事象も報告されており、今後さらなる研究が必要とされています。
つまり、現時点での酒さに対するボトックス治療は、従来治療で改善が乏しい酒さに対して、選択肢となる可能性がある、という考えが自然となります。
このように、酒さに対するスキンボトックスは「誰にでも行う治療」ではありませんが、適切に患者様を選べば、肌を落ち着かせる治療として有用な可能性があります。
参考文献
- Rho NK, Gil YC. Botulinum Neurotoxin Type A in the Treatment of Facial Seborrhea and Acne: Evidence and a Proposed Mechanism. Toxins. 2021;13(11):817.
スキンボトックスが皮脂分泌、毛穴、肌質改善に応用される背景を示したレビュー論文です。皮脂腺とアセチルコリン、コリン作動性伝達の関係について考察されています。 - Yang R, Liu C, Liu W, Luo J, Cheng S, Mu X. Botulinum Toxin A Alleviates Persistent Erythema and Flushing in Patients with Erythema Telangiectasia Rosacea. Dermatology and Therapy. 2022;12:2285–2294.
紅斑毛細血管拡張型酒さ16例に対して、皮内ボツリヌストキシンA注射を行った研究です。赤み、フラッシング、QOLの改善と効果持続期間が検討されています。 - Zhang H, Tang K, Wang Y, et al. Use of Botulinum Toxin in Treating Rosacea: A Systematic Review. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology. 2021;14:407–417.
酒さに対するボツリヌストキシン治療に関する9研究をまとめたシステマティックレビューです。有効性と安全性が検討されていますが、症例数や研究デザインの限界も指摘されています。 - Intradermal injection of botulinum toxin for erythema in rosacea: A scoping review and meta-analysis. Indian Journal of Dermatology, Venereology and Leprology. 2025.
酒さの顔面紅斑に対するボツリヌストキシンA皮内注射について、7研究・167名を解析したスコーピングレビューおよびメタ解析です。3か月後の紅斑スコア改善が示される一方、研究のばらつきや症例数の少なさが限界として挙げられています。 - Vasconcellos JB, Santos IO, Antelo DAP. Use of botulinum toxin for rosacea: a pilot study. Surgical & Cosmetic Dermatology. 2021;13.
酒さに対するボツリヌストキシン皮内注射のパイロット研究です。標準的なプロトコルがまだ確立されていない中で、赤みやフラッシングに対する応用可能性を検討しています。
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