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8月3日のカウンセリング症例(目の下の修正)
監修医師
MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠
1989年、アメリカ生まれ。10歳より沖縄で育つ。日本とアメリカ、双方の文化や価値観に触れてきた経験を生かし、患者様一人ひとりが持つ異なる美意識や希望を尊重した診療を大切にしています。日本語・英語の両方で診療を行い、国内外の知見を取り入れながら、自然で長期的な美しさを目指した美容医療を提供しています。大手美容外科にて約8年間、美容外科・美容皮膚科診療に携わり、2024年にMSA美容外科を開院。
略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院
資格・所属学会
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAPS)関連会員
The Rhinoplasty Society 海外会員
American Academy of Cosmetic Surgery(AACS)正会員
日本美容皮膚科学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員
過剰な脱脂とヒアルロン酸注入によって、修正が複雑化
8月3日、目の下から中顔面にかけてのくぼみやたるみについて、ご相談いただいた患者様がいらっしゃいました。
患者様は1〜2年ほど前に、他院で目の下の脱脂術を受けたとのことでした。
診察すると、目の下の脂肪が比較的多く取り除かれている可能性があり、光の当たり方によっては、目の下にくぼみや輪郭の不連続が見られました。また、目の下から頬の上部には、注入物が青白く透けて見える「チンダル現象」を疑う所見も認められました。
患者様ご本人に「目の下のヒアルロン酸を入れていませんか?」と聞いても、入れておりませんと回答。
「目のシワをよくする注射とか言って、手術後に何か注射しませんでした?」ともう一度聞くと
「あー、そういえば、なんかやってましたね。ちゃんとは覚えてませんでしたが、なんかシワの注射やってました。」とのこと。
このパターンは何度も見たことがあり、某クリニックの決まった治療法です。脱脂に大量のsunekos注射を重ねているものです。
(※ スネコスは、非架橋ヒアルロン酸とアミノ酸を含む製剤であり、一般的な架橋ヒアルロン酸のように輪郭形成を主な目的とするものではありません。そのため、「ボリュームをつくらない」「チンダル現象を起こしにくい」と説明されることがあります。しかし、それは適切な層に少量ずつ、薄く分散して注入されることを前提とした話です。非架橋ヒアルロン酸であっても、皮膚の薄い目の下へ一定量以上を注入したり、浅い層や一部に偏って残ったりすれば、膨らみや浮腫、青白い色調が生じる可能性があります。
また、目の下は皮膚や皮下組織が薄く、リンパ還流の影響も受けやすい、解剖学的に特殊な部位です。ヒアルロン酸の分解や排出には、内因性ヒアルロニダーゼだけでなく、細胞による取り込みや分解、リンパ系を介したクリアランスなどが関与します。目の下では、こうした代謝や排出の特性により、注入されたヒアルロン酸が想定以上に長く残存したり、水分を保持して膨らみや浮腫として目立ったりすることがあります。
重要なのは、「スネコスだから問題が起こらない」「非架橋ヒアルロン酸だから残らない」と、製剤名や性質だけで判断しないことです。どの製剤であっても、目の下に注入する以上、注入層、1か所あたりの量、総注入量、治療間隔、過去の手術歴や注入歴を慎重に考慮しなければなりません。)

このような症例を診察すると、「目の下の脱脂術は、そもそも悪い手術なのではないか」「最初からハムラ法を受けるべきだったのではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、当院では、脱脂術そのものが悪い治療であるとは考えていません。
脱脂術にもハムラ法にも、それぞれ適した症例と明確な限界があります。問題となるのは術式そのものではなく、患者様の状態をどのように診断し、その術式をどのように使うかです。
脱脂術そのものが悪いわけではありません
当院でも、患者様の状態によっては目の下の脱脂術を行っています。
目の下の脂肪による膨らみが主な原因であり、皮膚の余りや目の下のくぼみが少ない方では、適切な量の脂肪を取り除くことで、すっきりとした自然な目元になることがあります。
特に、目の下から頬にかけての段差が少なく、ティアトラフ靱帯によるくぼみが強くない方では、脱脂術だけでも十分にきれいな仕上がりを期待できる場合があります。
一方で、脱脂術は「脂肪をたくさん取れば取るほど、きれいになる手術」ではありません。目の下の脂肪には、眼球を支えるとともに、目の下から頬にかけて滑らかな輪郭をつくる役割があります。必要以上に脂肪を取り除くと、膨らみは改善しても、今度はくぼみや影、皮膚の余り、細かいしわが目立つようになることがあります。
つまり、脱脂術で基本的に改善できるのは、目の下に突出している脂肪の膨らみです。ヘルニアしている分以上に脱脂をすると、かえっておかしくなることも確かにあり得ます。
問題となるのは脱脂術という術式そのものではなく、患者様の適応をどのように判断し、どの程度の脂肪を取り除くかという「使い方」です。
脱脂術とハムラ法は、単純に優劣をつけられません
目の下の治療について調べると、「脱脂術とハムラ法のどちらが優れているのか」という議論を、インターネット上で数多く目にします。脱脂術を全面的に否定してハムラ法を勧める意見もあれば、反対に、ハムラ法は大がかりな手術であり、脱脂術だけで十分だとする意見もあります。しかし、この二つの術式を単純に比較し、どちらか一方が常に優れていると考えることはできません。
確かに、ハムラ法にはできても、脱脂術だけではできないことがあります。
代表的なのは、目の下の膨らみだけでなく、目の下から頬にかけてのくぼみを同時に整えることです。ハムラ法では、眼窩脂肪を単純に取り除くのではなく、くぼみの方向へ移動させることで、膨らみとくぼみの段差をなだらかにすることができます。

一方で、すべての患者様にハムラ法が必要なわけではありません。
目の下のくぼみが少なく、脂肪の膨らみが主な問題となっている場合には、適切な脱脂術だけでも十分な改善を期待できることがあります。ハムラ法は、操作する組織や手術工程が増える分、手術の負担やダウンタイムも大きくなる傾向があります。必要のない方にまで複雑な手術を行えばよい、というものでもありません。
大切なのは、「脱脂術とハムラ法のどちらが優れているか」ではなく、「その患者様の目の下に何が起きており、どの術式が最も適しているか」です。

脱脂術を行う前に説明すべき限界
脱脂術を行う場合には、施術前にその限界を患者様へ説明する必要があります。
たとえば、
・目の下の膨らみは改善できても、すでにあるくぼみは残る可能性があること
・脂肪を取りすぎると、くぼみや影、しわが目立つ可能性があること
・将来的に中顔面の組織が下がると、目の下の段差が目立つ可能性があること
・状態によっては、ハムラ法や脂肪注入など、別の治療の方が適していること
こうした点を患者様が理解し、納得したうえで、術式を選択することが重要です。またそれぞれに対する長期的な他処方も説明すると、より親切になります。例えば、脱脂した後、将来的に中顔面が下がってきた時の具体的な対処法(引き上げ、ヒアルロン酸、その他手術療法など)。
説明を十分に行わないまま、比較的簡便な術式をすべての患者様に当てはめることには慎重であるべきです。
脱脂と注入治療を同時に行う理由
脱脂術によって目の下の脂肪を多く取り除くと、術後早期からくぼみや細かいしわが目立つことがあります。そのため、脱脂術と同時に、スネコスなどの注入治療を組み合わせる方法が行われることがあります。
適切な説明と計画のもとで行われるのであれば、注入治療を組み合わせること自体が問題というわけではありませんが、脱脂によって生じたくぼみを注入物で覆い隠すような治療になると、目の下の膨らみは一時的に改善して見えても、本来の解剖学的なバランスは崩れたままになります。
施術を行ったクリニック側から見ても、「目の下がくぼんだ」「しわが増えた」という術後早期の訴えを減らせる可能性があります。
しかし、長期間安定して続きません。加齢は続くし、注入物も徐々に吸収されます。1〜2年ほど経過し、中顔面の組織がさらに下がったり、注入物の輪郭が目立つようになったりすると、残った注入物だけが塊のように浮き出て見えることがあります。
注入されたことを患者様が知らなかった
今回、特に難しいと感じたのは、患者様ご本人が、目の下から中顔面に注入治療を受けたという認識をほとんど持っていなかったことです。患者様は、現在の頬のボリュームを、ご自身の本来の組織によるものだと思われていました。
それを、注入していない当院で紐解いてあげ、説明するのも実は一苦労なのです。
「え?そんなの聞いていないですけど?」患者様は当然感情的になります。しかし、それは患者様と他クリニックとの間での出来事であり、それは当院が責任を持てません。
もちろん、当時どのような説明が行われ、何をどの層にどの程度注入したのかは、現在の診察だけでは断定はできませんが、診察でわかること = 目で見える「チンダル現象」、手で触れる「異物感」などなど。これは確かなのです。
注入物が残っていると、次の治療が難しくなる
目の下から中顔面に注入物が残っている可能性がある場合、その上からさらにヒアルロン酸や脂肪を追加することには慎重になる必要があります。注入物の周囲に線維性の組織が形成されていたり、製剤が一部に偏って残っていたりすると、新たに注入したものが均等に広がらず、凹凸や不自然な膨らみが生じる可能性があります。
本来であれば、注入物を溶解できる場合には一度除去し、その方の本来の目の下と中顔面の状態を確認してから、治療方針を立てることが理想です。
ただし、注入物を溶かすことで、それまで隠れていたくぼみやボリューム不足、シワが一気に目立つ可能性があり、これは患者様は嫌がります。
でも、現状を見ない限りはなんともできない、なんとも判断しづらい状況なのです。
今回ご説明した3つの選択肢
今回の患者様には、目の下から中顔面について、大きく3つの選択肢をご説明しました。
1.今は治療を行わず、経過を見る
すぐに新しい治療を重ねず、現在の状態を観察する方法です。
目の下は、一度治療を重ねるほど、次の修正が難しくなることがあります。急いで何かを追加するよりも、何もしないことが最も安全な選択になる場合もあります。美容医療は、まずはこれが第一選択であるべきですし、特に手術療法は当院では即決させることはありません。
2.少量のヒアルロン酸で輪郭を調整する
不自然にならない範囲で、くぼみや輪郭の段差を少しだけ整える方法です。
ただし、上述の通りすでに注入物が残っている可能性があるため、注入できる量には限界があります。また、ヒアルロン酸で目の下のくぼみを埋めることはできても、下がった中顔面の組織そのものを十分に引き上げることはできません。追加注入によって、将来的な治療がさらに複雑になる可能性についても考える必要があります。
3.中顔面リフトなどの手術を検討する
目の下にさらにボリュームを追加するのではなく、下がっている中顔面の組織を引き上げ、本来あるべき位置関係に近づける方法です。
ただし、手術を行う場合にも、残存している注入物を一度しっかりと除去し、的確な評価をする必要があります。その上で、中顔面リフトや脂肪注入などの治療計画を立てる必要があります。手術にはダウンタイムやリスクもあるため、十分な検討が必要です。
大切なのは、落ち着いて考えること
美容医療では、問題が残ったときに、さらに注入する、さらに引き締める、さらに何かを追加する、という方向に進みがちです。しかし、目の下から中顔面は、解剖学的に非常に繊細な部位です。特に一度治療をしている部分は、詳細に紐解いて考えていく必要があります。すぐに修正をしても、かえってもっと複雑化することがあります。
そこまで考えたうえで、患者様に十分な説明を行い、治療を選択することが重要です。
今回の患者様についても、すぐに治療を重ねるのではなく、まずは判断を保留。
現在の状態と過去の治療による影響を丁寧に整理しながら、慎重に方針を決めていくことになりました。
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