見えない瘢痕?
HIFUなどによる影響

監修医師

モレロ オースティン誠

MSA美容外科 院長モレロ オースティン誠

略歴
2018〜2024年 大手美容外科沖縄院 院長
2024年 MSA美容外科 開院

所属学会
日本美容外科学会(JSAS)正会員
日本美容外科学会(JSAPS)関連会員
日本美容外科学会(JSAS)認定専門医
The Rhinoplasty Society 海外会員
アメリカ美容外科学会(AACS)海外会員
日本美容皮膚科学会 正会員
日本美容外科医師会 正会員

HIFUや高周波治療は、切らずに顔を引き締められる治療として広く行われています。

実際に、肌のハリや輪郭のもたつき改善に有効な治療です。一方で、最近の美容外科領域では、こうした治療を何度も受けた後にフェイスリフトを行う患者様が増えています。

そこで、少しずつ分かってきたことがあります。

それは、エネルギー治療による変化は、必ずしも肌の表面だけに起こるわけではない、ということです。

目には見えない「組織の傷あと」

今回ご紹介する論文では、HIFUや高周波治療後に生じる可能性のある深部組織の変化を、

Invisible Scar=目には見えない瘢痕と表現しています。

もちろん、顔の表面に傷あとができるという意味ではありません。

肌の深い部分で、組織が少し硬くなる、脂肪が減る、組織同士が癒着する、皮膚や皮下組織が滑りにくくなるといった変化が起きる可能性がある、という意味です。

これらは普段の診察では分からないこともありますが、フェイスリフト手術で組織を剥離し顔の中を見たときに、初めて明らかになる場合があります。

フェイスリフトは、皮膚を引っ張る手術ではありません

フェイスリフトというと、「余った皮膚を切って引っ張る手術」というイメージを持たれがちですが、現在のディーププレーンフェイスリフトでは、皮膚だけを引っ張るのではありません。皮膚の下にある脂肪や筋膜などを、適切な層で動かし、顔の土台全体を自然な位置へ戻していきます。このためには、組織が柔らかく、適切に動くことがとても重要です。

深い部分に強い熱が何度も加わり、組織が硬くなっていると、

  • 剥離する層が分かりにくい
  • 組織が動きにくい
  • 一部だけ強く癒着している
  • 皮下脂肪が薄く、凹凸が出やすい

といった問題が生じる可能性があります。

実際にこれまでの患者様で、顎下の脂肪吸引や複数回のHIFUと糸リフトを繰り返している方などで組織が非常に硬くなっており、予定よりも手術時間が伸びてしまった症例も多くありました。

ただ、安心してください。手術ができなくなるわけではありません。難しくなるだけです。

同じ「HIFU」という名前でも、皮膚の浅い層を狙う治療と、SMASに近い深い層を狙う治療では、組織への影響が異なります。また、針を刺して高周波を流すRFマイクロニードル治療では、針の深さや出力によって、皮下脂肪まで熱が届くことがあります。

つまり、機械が良いか悪いかではなく、どこに、どれだけ、どのように使ったかを把握しておくのが重要です。

ただ、実際には患者様がそこまで覚えているのは難しいですよね?

なので、当院の答えは機械治療も当院で受けることなのです。いつかはフェイスリフトをするかもと考えている場合、あちこちのクリニックで治療を受けているとどのような治療を受けたのかは全て患者様の記憶まかせとなります。しかし、MSAで受けているならばカルテで残ります。

「脂肪が減る=小顔になる」とは限りません

顔の脂肪は、すべて不要なものではありません。とくに頬の脂肪は、顔の丸みや若々しさを作る大切な組織です。

深い熱治療を強く行いすぎると、脂肪が減って一時的にすっきり見えることがあります。しかし、後々から頬がこける、骨張って見える、皮膚が薄く見えるといった変化につながることがあります。

「顔が小さくなれば若く見える」というわけではありません。若々しさには、引き締まりだけではなく、適切な部位に適度なボリュームと、滑らかな立体感が必要です。こちらは日本の小顔文化に対しての別コラムとなります。ぜひご一読ください。

注意したいのは、頬の内側と首の外側

論文では、とくに頬の内側と首の外側への強い深部照射に注意が必要とされています。頬の内側は、若々しい中顔面のボリュームを保つうえで重要な場所です。ここはよく脂肪吸引などでも処置の対象となる部位です。

首の外側は皮下脂肪が薄く、将来ネックリフトを行う際に、組織を広く動かす必要があります。こちらも脂肪吸引のカニューレで組織がダメージを受けやすい部位です。

これらの部位に強い線維化や脂肪減少が起こると、将来の手術ができないわけではありませんが、手術の難易度が上がったり、十分な移動量を得にくくなったりする可能性があります。

大切なのは、「今」だけでなく「将来」も考えること

HIFUや高周波治療は、適切に使えば非常に有用な治療です。ただし、何となく毎年受ける、強い方が効くと思って出力を上げる、顔全体に同じ深さで照射する、という考え方はお勧めできません。

顔全体を一つの平面として考えるのではなく、皮膚、脂肪、筋膜、骨格を含めた三次元構造として考える必要があります。

当院では、HIFUや高周波治療を行う際にも、目の前の引き締め効果だけを見ているわけではありません。患者様の年齢、皮膚の厚み、脂肪量、骨格、将来フェイスリフトを受ける可能性まで考えながら、治療の深さや部位を選択します。

なお、この論文は手術成績を比較した臨床試験ではなく、既存の研究と外科医の経験をまとめた専門的なレビューです。著者自身も、機械の種類、深さ、回数と、将来の手術結果との関係については、今後さらに研究が必要だと述べています。

したがって、エネルギー治療は危険だから避けるべきという話ではありません。

当院でもHIFUやボルニューマなどのエネルギー治療は取り扱っておりますし、患者様にお勧めすることがあります。問題は、全員にその選択肢だけを教えることです。

たるみには様々な治療法があります。それらの全てを加味した上で治療提案をすること

将来の顔まで考えて、適切に使うべき治療であるというのが、この論文から読み取るべき本当のメッセージです。

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